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故安倍晋三氏の国葬に関する要望書

市民の市長をつくる会は、山中市長に対して以下のような要望書を提出しました。


故安倍晋三氏の国葬に関する要望書

横浜市長 山中竹春 様

いつも横浜市民の福祉の向上のために、ご尽力いただいていることに、こころから感謝と敬意を表します。

私どもは、9月14日に神奈川新聞が、「横浜市の山中竹春市長は14日の定例記者会見で、27日に行われる安倍晋三元首相の国葬について「出席に向けて前向きにスケジュールを調整しているところだ」と述べ、出席する場合の経費については「横浜市長として国から招待されているので、公務としての参列になる」と語り、公費で負担する考えを示した。国葬に合わせて市庁舎などの市有施設で半旗を掲げたり、市教育委員会を通じて市立学校に弔意を求めたりするかと問われたのに対しては、『検討中』と述べるにとどめた」との報道を知り、たいへん驚きました。

なぜなら、岸田政権が7月22日の閣議において、安倍晋三元首相の「国葬」実施を決定したことは、憲法研究者84人が表明しているように、法治主義に違反することと認識しているからです。

岸田政権は、多額の税金が投入されるにもかかわらず、野党への事前の説明も了解もなく、国会での閉会中審査のみで本会議での議論や議決もなく、3権の長も諮らずに閣議決定だけで強行することは、到底許されることではありません。岸田首相は、各府省や関係機関に対して弔旗掲揚や黙禱などの弔意表明を求める閣議了解は行わないとしながらも、葬儀委員長の決定に基づいて、各府省で弔旗の掲揚や黙とうによる弔意の表明は行うとしており、国民への弔意表明を事実上強制しています。

法的には、明治憲法下で天皇の「思(おぼ)し召し」による国葬の実施を定めた国葬令は、日本国憲法の平等主義や基本的人権の保障に反するために、1947年に失効しています。国葬の要件を定めた法規がないもとで、国会が関われない内閣府設置法を根拠に国葬を実施しようとしている岸田内閣の手続きは、明らかに法治主義に違反しています。国葬当日に社会が受ける影響を懸念し、憲法が保障する「思想・良心の自由」(19条)、「信教の自由」(20条)、「表現の自由」(21条)への抵触や、「自己の信念に反する国葬が実施されるという事実をもって、国民の各人がもつ人としての在り方、『個人としての尊厳』(憲法13条)への侵害が生じる恐れがあります。政治的効用を意図しているのであれば、国家の行為を厳格に制約しようとする憲法の立憲主義の構造に反しています。

さらには、「法の下の平等」(13条)にも違反します。岸田首相は7月14日の記者会見でも、9月8日の国会閉会中審査でも、4つの理由をあげましたが、このどれもが岸田首相の主観的評価で、国民を納得させるものではありませんでした。当時、史上最長の内閣総理大臣を勤め、ノーベル平和賞を受賞した佐藤栄作氏は国民葬でした。安倍氏の実績についてはさまざまな評価があり、森友学園問題、加計学園問題、「桜を見る会」など、政治の私物化が指摘されています。とくに、森友学園問題では、安倍氏の国会での発言がもとになった公文書の改竄を命じられた近畿財務局の赤木俊夫さんが自殺に追い込まれています。また、安倍首相が祖父・岸信介氏の時代から3代にわたって旧統一協会と深い関係をもってきた事実が報道されており、その安倍氏を国葬で国全体で敬意と弔意を表わすことは、岸田首相と茂木幹事長が「自民党は旧統一協会とは一切関係を持たない」と主張していることとも大きく矛盾することになります。

戦後唯一となっている1967年の吉田茂氏の「国葬」では、当時の佐藤栄作首相が「法的根拠のない国葬を超法規的措置で実施するには、野党の了解が必要だから、野党第1党の社会党を説得しろ」と命じ、内諾を得た上で、実施を決めています。そして、その後の国会では、「国葬の実施には何らかの基準が必要」と当時の閣僚が答弁しています。野党の了解もなく、閣議決定したことは、国会と国民を無視することです。また、その基準が定められないまま、安倍氏の国葬を実施することは、明らかに法治主義に反することです。

そのような状況にもかかわららず、岸田政権が安倍氏の国葬を強行することに対して、すべての世論調査で「反対」が「賛成」を大きく上回っています。9月のNHKでは、安倍氏の国葬を評価する32%、評価しない57%、朝日新聞では国葬に賛成が38%、反対が56%、岸田首相の説明に納得できる23%、納得できない64%、時事通信では国葬に賛成が25.3%、反対が51.9%でした。このような「国葬」に、立憲民主党、日本共産党、社会民主党、れいわ新選組は、出席しないことを決めています。また、多くの国民が反対の声を全国各地で上げています。横浜でも各地の駅頭で国葬反対宣伝が行なわれ、8月26日に磯子区で実施された「国葬反対パレード」には195人の市民が参加しました。

山中市政を誕生させ、支持する運動を進めてきた私たちは、山中市長が、市民の税金を使って、憲法と法治主義に違反し、民意にも反する「国葬」に参列することには賛同することはできません。ましてや、弔意を市民や子どもたちに強要することには、強く反対します。

 なにとぞ、私どもの要望の真意をくみ取り、ご理解くださるようこころよりお願い申しあげます。

2022年9月20日

市民の市長をつくる会
筆頭代表委員 後藤仁敏

連絡先 〒231-0062 横浜市中区桜木町3-9 横浜平和と労働会館3階
電話 045-650-1896

担当 事務局長 菅野隆雄